【小話】鉄 その1 鉄隕石

鉄隕石
地球には時々隕石が落ちてきます。その多くは石質隕石と呼ばれる石が主体の隕石ですが、約5%程の隕石は鉄でできています。鉄が空から降ってくる。どういう事なのでしょうか。
隕石のほとんどは地球のような大きな惑星になりきれなかった小さな石の塊です。地球が誕生した頃に同じように太陽系で誕生しました。地球はそれらの塊が少しずつ引力に引かれて集まってできたのですが、たまたまそういう星の引力に捉えられることなく46億年も漂い続けて、今、地球に捉えられ落ちてくることがあります。このような隕石は太陽系初期の星々の特徴を残しており石質隕石の大半を占めます。一方、地球ほどの大きさにはなれなかったけど、そこそこの大きさまで成長した星があります。これらを小惑星といいます。小惑星探査機「はやぶさ」が訪れたのもこのような星でした。「はやぶさ」が訪れた小惑星イトカワや「はやぶさ2」が訪れた小惑星リュウグウ。それぞれ1km以下の大きさで変わった形をしています。もう少し大きな小惑星で直径300kmを超えてくると球体になってきます。自分自身の重力が大きくなり、中心からの距離をなるべく均一にしようとするからです。このような大きさまで成長するときには隕石がたくさん落ちてきて、そのエネルギーで高温になり岩石もなにもかもがドロドロに溶けてしまいます。そうしたドロドロに溶けた状態では重たい鉄は、中心に向かって沈んでいきます。球体の星の中心には鉄が密集するのです。地球もそうです。地球の中心にはコアがありそれは鉄でできています。
そんな小惑星同士がたくさんぶつかりあい、くっつきあって惑星へと成長してきました。しかしすべてが集まりきったわけではなく、ぶつかった時の衝撃で砕け散ったかけらのまま宇宙空間へ飛び出したものもあります。この中心部分にあった鉄もまた、かけらとして宇宙を漂うものもありました。この鉄のかけらが地球に落ちてきたときに鉄隕石となるのです。鉄隕石は、元々太陽系に存在した今は無き小惑星の中心、星の真ん中のかけらなのです。

鉄隕石の中には、その証拠を残しているものがあります。鉄隕石を切断して、表面を硫酸で少し溶かすようにします。そうすると鉄とともに含まれていたニッケルとの境界が浮き出してきます。この浮き出してきた模様をウィドマンシュテッテン模様と呼びます。
オーストリアの科学者ウィドマンシュテッテンが発見しました。
このウィドマンシュテッテン模様。人間は絶対に作ることができません。
なぜかというと鉄が一度高温になって溶けた後、ゆっくり時間をかけて冷まして固めていくことで模様ができるのです。問題は時間です。1万年に1度ほどのペースでゆっくり冷ましていく。人はこんなにゆっくりと鉄を冷ますことはできません。また地表でもできません。しかし小惑星では、表面ははやく冷めていくのですが、中心部はゆっくりゆっくりと冷めていくことができたのです。
ウィドマンシュテッテン模様、この模様を持つ鉄は小惑星の中心でできた鉄の証拠でもあるのです。
鉄隕石はかつてあった小さな星の、中心部分のかけらなのです。

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