【小話】ストロマトライト

ストロマトライト

ストロマトライトは学校で学ぶことも少なく、あまり知られていない化石です。
しかし生命史を語る上では欠くことができません。

地球に生命が誕生した舞台は海でした。その最初期に誕生したのがシアノバクテリアという生命です。その頃の地球の大気は二酸化炭素が主体で今の私たちが生きるために必要な酸素はほとんどありませんでした。
シアノバクテリアはそんな二酸化炭素を使って、コツコツと酸素を作っていったのです。
いわゆる光合成の開始です。シアノバクテリアは細長い糸のような身体をしています。その糸のような身体で昼は波間を漂い、光合成を行います。そして夜は糸を岩間に横たえます。その横たえたときに粘性のある身体には砂などの微細な粒子がくっつき、それはいつしか、年輪をもった岩として大きく成長していきました。
そのシアノバクテリアが作り出した岩がストロマトライトと呼ばれています。

ストロマトライト、そしてそれを作ったシアノバクテリアは生命史上何を行ったのでしょうか。
それは、地球の大気そのものを変えてしまったのです。二酸化炭素主体の大気を酸素のある大気へ。これは劇的な変化でした。
二酸化炭素を使った呼吸は生命にとってあまり効率が良くありません。酸素の方が格段にエネルギーを作れるのです。酸素が豊富になると、酸素で呼吸する生命がでてきます。彼らはエネルギー効率が高められたことにより、身体を大きくし、積極的に動き回るようになります。活動的になることで生命は多様性を増していきます。
私たちにつながる生命への道が大きく開かれたのです。
広い意味では、シアノバクテリアが作った酸素によって私たちは、今ここに存在しているとも言えましょう。

シアノバクテリアが作った酸素は別の活躍もします。酸素は水に溶けやすく、大気の組成を変える前に大量に海に溶けていきました。
当時、海には鉄イオンという形で鉄が溶けていました。その鉄イオンと酸素が結びついて酸化鉄となります。鉄イオンの時は海水に溶けていた鉄も酸化鉄となると重くなって海の底に沈んでいきました。この酸化鉄が海の底に降り積もり縞状に重なります。一般的に言う、鉄鋼石が生成されたのです。
私たちの文明は鉄無くして成立しません。私たちの使っている鉄のほとんどが、シアノバクテリアが作り出した酸素によって生成されたのです。
シアノバクテリアは私たちの文明の礎を陰ながら支えてくれていたのです。

石と生命は無縁のように感じます。しかしストロマトライトを見つめると、互いに影響しあいながらこの地球を作ってきたことが感じられます。
このような関係性を「共進化」と呼びます。
大地や大気の環境が生命に影響を与え、生命の活動が大気や大地に影響をあたえる。そんなことに思いを馳せられるストロマトライトの化石なのです。

おすすめの記事